過つは彼の性、許すは我の心 肆



 頬を叩く様に両手で包まれる。

 目が涙で歪むとふわりと、


「落ち着きなさい大丈夫。大丈夫だから」

「うっ…うっ…!」


 抱き締められた。

 章乃さんの身体にしがみつくと、更に強く抱き締めてくれた。

 病で伏せがちになった細い章乃さんの身体。弱々しく見えるのに、どうしてこんなに安心するのか。抱き締めながら背中を撫でてくれる優しさに涙が止まらなかった。


「章乃…」


 彼女は文啓兄さんの言葉に応えずに、僕の嗚咽が落ち着くのを根気強く待ってくれた。

 暫くして、


「八重さん」

「…っありがとう、ごめん」


 彼女が僕を身体から離す。

 苦笑いしながらしょうのない子だと目尻に溜まった涙を拭って、


「八重さん…いえ紅葉(くれは)さん」


 偽りだらけの僕の、本名。


「どうするの?」

「…」


 どうして良いかわからない。

 ただでさえ狂乱の中であの場を去った後で、追われる身。

 今後の事なんて想像が付かない。


「普段ならゆっくり考えろと言うでしょう。でもそうも行かないのは分かるわね」

「…」


 頭では拒否しているのに理解はしている。


「身体はこれから嫌でも変わる。こっちが幾ら待って!と言ってもね。酷だとは思うけれど、貴方は選ばないといけない」


 章乃さんの視線は僕の腹部に注がれて、視線を落とした。