頬を叩く様に両手で包まれる。
目が涙で歪むとふわりと、
「落ち着きなさい大丈夫。大丈夫だから」
「うっ…うっ…!」
抱き締められた。
章乃さんの身体にしがみつくと、更に強く抱き締めてくれた。
病で伏せがちになった細い章乃さんの身体。弱々しく見えるのに、どうしてこんなに安心するのか。抱き締めながら背中を撫でてくれる優しさに涙が止まらなかった。
「章乃…」
彼女は文啓兄さんの言葉に応えずに、僕の嗚咽が落ち着くのを根気強く待ってくれた。
暫くして、
「八重さん」
「…っありがとう、ごめん」
彼女が僕を身体から離す。
苦笑いしながらしょうのない子だと目尻に溜まった涙を拭って、
「八重さん…いえ紅葉さん」
偽りだらけの僕の、本名。
「どうするの?」
「…」
どうして良いかわからない。
ただでさえ狂乱の中であの場を去った後で、追われる身。
今後の事なんて想像が付かない。
「普段ならゆっくり考えろと言うでしょう。でもそうも行かないのは分かるわね」
「…」
頭では拒否しているのに理解はしている。
「身体はこれから嫌でも変わる。こっちが幾ら待って!と言ってもね。酷だとは思うけれど、貴方は選ばないといけない」
章乃さんの視線は僕の腹部に注がれて、視線を落とした。



