ポツンと、
「…初めは変だけど面白い子だって」
妃帥ちゃんが溢す。
「でも人を見る目はありそうだし、中流家庭なら邪魔になりそうな家でもないだろうから、御し易いだろうって」
それは過去を辿る話で、
「それがこんなに内側に食い込まれて、気付いたら私達には居なくてはならない存在になっていて…」
未来にも繋がる話。
そして、
「他人に言われて気付くなんて本当に馬鹿げているわ…頬を叩かれた気分よ」
自分の愚かさを語る。
込み上げるモノが胸に迫る。
「どれだけ貴方が私達を献身的に支えてくれていたか私達は知っているわ」
私を映す瞳に一切の迷いはなく、
「だから、手放すの。私達を支えた貴方を守る為に」
あの時憧れた高潔さが妃帥ちゃんに宿っていた。
「妃帥ちゃん…」
妃帥ちゃんの言いたい事とその気持ちが分かって、瞳がまた潤んで来る。
「獅帥」
妃帥ちゃんに呼ばれた獅帥君がゆっくりと私に視線を合わせる。
「綴」
獅帥君に向き直ると、妃帥ちゃんによく似た瞳で私を見つめている。
彼が不安に揺れると、いつの間にか私まで不安になってどうにかしなきゃと思っていた。
でも今の獅帥君には、
「綴行ってくれ。俺が、俺達が、取り巻く全てが綴を壊す前に」
妃帥ちゃんと同じモノが宿っていた。



