「本当にどうしたんだ輝咲。何か、」
「お父様は黙ってて頂戴」
匡獅さんの言葉をピシャリ。
何となく場に緊張が走る。
輝咲ちゃんがゆらりと歩き始めて、長い机の外周を辿ると向かい側に座っている私達の傍まで来た。
もしかして私が何か怒らせちゃった?
戦々恐々と輝咲ちゃんの行く末を見守っていれば、輝咲ちゃんの足が止まる。
止まった先に居たのはーーー…。
「…獅帥」
「…」
隣に居た獅帥君の前で、渋々と言った感じで獅帥君が輝咲ちゃんの方に身体を向けた。
「…」
「…」
武士の睨み合いみたい。(一般市民の感想)
と言うか私の方が緊張して来た。
そもそも輝咲ちゃんの怒り?ポイントが何か分からない上に、2人は仲が悪いと来ている。
幼い頃から支えているだろう周囲に立っていた数名の使用人の顔が強張り(匡獅さんは食事を終えて紅茶を飲んでいる)私も触らぬ神…触らぬオオミカに祟り無しで、2人の会話を黙って聞く事にした。
すると絹糸の様に細い黒髪がサラリと傾れる。
え…。
その場に居た皆が驚く。
「…何の真似だ」
戸惑う獅帥君の声が隣で聞こえた。
獅帥君の目の前にーーー頭を下げる輝咲ちゃんが。
人に謝らせる事はあっても謝る事は無かっただろうあの輝咲ちゃんが。
「謝りたかったずっと」



