――プライベートのハッキング進捗。
理奈の言葉に、脳裏を掠めるのは一週間前の記憶。帝国ホールディングスからの帰りのタクシーで、窓の外を流れる夜景を見つめていた景が、一瞬だけ見せたあの寂しそうな微笑み。
だが結局、あれから景はいつも通りだ。
以前と変わらず底抜けに明るく、仕事は有能で、それ以外については全く使い物にならないところも変わらない。
今日は昼食時に、弁当のゆで卵を電子レンジで爆発させて、フロアがちょっとした騒ぎになった。
『真壁さん、卵が……卵が跡形もなくなってしまったんだ……!』
情けない顔で訴える彼に、「ゆで卵は爪楊枝で穴を開けてから温めなさい」と注意したら、「なるほど!」と頷いていたが、ふと、デスクに戻って気がついた。
あの弁当は、誰が作ったのだろう。
そもそも、あの御曹司が自分で弁当を作るはずがない。……となれば、恋人か。あるいは、家政婦という可能性も。



