五年前、三人はITソリューション部の新人として、同じフロアで二年間、地獄のようなデスマーチを共にした同志だ。
理奈は今、ソリューション部第二課で顧客の要望を形にするアーキテクト。瀬戸はインフラ基盤部でアルカディア・ソリューションズ――通称『AS』の心臓部を守っており、部署はバラバラ。
けれど、月に一度、この店で行われる「定例メンテナンス」だけは、五年の間、一度も欠かしたことがない。三人の「共通の取り決め」だ。
「じゃ、改めて。帝国陥落、マジでおめでとう! 乾杯!」
「「カンパーイ!」」
瀬戸の音頭と同時に、理奈がジョッキを勢いよくぶつけてくる。その隣で、瀬戸はビールをごくごくと一気に飲みして、ぷはぁっと大きく息を吐いた。
「かぁーっ……! いやー、マジで、この一杯のために働いてるようなもんだわ! あ、大将、生追加! あと、ハムカツ厚切りで、モツ煮も! 辛味噌多めにつけてね!」
「ちょっとお、瀬戸。もう四杯目? ペース早すぎない?」
「大丈夫、俺、酒強いから。知ってるだろ?」
「そうだけどさー、酔うとあんた、めんどいもん。説教くさくなるし」
呆れ顔の理奈と、開き直る瀬戸。
瀬戸は仕事では精密機械のようにサーバーを管理しているくせに、プライベートでは信じられないほどだらしなく、酒癖も悪い。けれど、そんな「バグ」を含めた素顔を晒し合えるこの関係こそが、怜にとってのセーフティネットだった。



