その恋、仕様外につき――鉄壁SEは御曹司の暴走を許さない


 胸の奥に、熱い何かが込み上げる。
 まだ出会って二週間。それなのに、この男はどうしてこれほどまでに自分の力を信じ、すべてを預けてくるのか。

 悔しいけれど、嬉しかった。そして同時に、強烈な自負が芽生える。
 この天才は、放っておいたらどこまでも遠く、一人の世界へ行ってしまう。この無鉄砲な才能の手綱を握り、現実に繋ぎ止めておけるのは、自分しかいない。

「……課長の言い分はわかりました」

 怜は、火照る顔を隠すように努めて冷静に言った。

「でも、次は必ず私に言ってください。今回みたいに、黙っていなくなるのは絶対に駄目です。コンプラ的にも、私の精神衛算的にも」
「……努力するよ。でも、僕、夢中になると周りが見えなくなるみたいで、自信がないな」

 景が困ったように笑う。怜はすかさず、憎まれ口を叩いた。

「そこは『はい、気をつけます』って黙って頷くところですよ。……もう、本当に、仕方がないんですから、課長は」
「ふふ、そうだね。でも、君が僕を見ててくれるから、僕は自由でいられるんだ」

 景は楽しそうに笑い、再び窓の外へと目を向けた。

 三人を乗せたタクシーは、夜の喧騒が渦巻く新宿駅前へと吸い込まれていく。

 帝国ホールディングスを揺るがした一日は、これにて一旦の幕を閉じた。

 ――が、彼らのプロジェクト『Ark』は、まだ始まったばかりである。