怜は思わず、話を止めた。
ミリ秒単位のズレ――そんなものに、この男は気づいたというのか。
「そんな小さなズレ、聞き分けられるものなんですか? 私をからかってるんじゃないですよね?」
真顔で問うと、景はどこか、寂しげな顔をする。
「やっぱり、変だよね。アメリカでも言われたよ。お前はおかしいって」
「――っ」
その瞬間、怜の胸がズキンと跳ねた。
いつも軽薄なほどに明るく、何を考えているのかわからない、アメリカ帰りの御曹司。けれど今、目の前にいる景は、圧倒的な才能を持ちながら、それゆえに周囲と切り離されてきた、痛烈な孤独を纏っている。
暗い車内、街灯の光が交互に差す中で、景の横顔がひどく色っぽく、そして危うく見えた。
「君をひとりにして、本当にごめん」
景がまっすぐに怜を見た。
「でも、僕は確信していたんだ。君なら、僕がいなくてもプレゼンをやり遂げてくれるって。真壁怜というエンジニアなら、あの場の不協和音をロジックで黙らせてくれる。……だから僕は、安心して自分の仕事に集中できた。君を信じていたからだよ」
「……っ」



