その恋、仕様外につき――鉄壁SEは御曹司の暴走を許さない


 それは、率直な疑問であり、景に対する苛立ちだった。
 会議室に現れたときの、景の立ち居振る舞い。赤木の持ち込んだ『許可証』。何より、システムダウンが起きたのは、会議が始まるのとほぼ同時刻だった。
 ダウンと同時に入退室ができなくなったということは、景は、それよりも前に、地下二階の情シスに入り込んでいたということになる。

「私、すごく心配したんですよ。どうしようって焦ったし。……そういうつもりだったなら、最初から言ってくれればよかったのに」

 怜が口を尖らせると、景は申し訳なさそうに眉尻を下げ、けれど、柔らかに微笑んだ。

「ごめんね、びっくりしたね。実を言うと、はぐれた瞬間は、他のことは全部忘れてしまっていたんだ」

「……忘れていた? どういうことですか?」

「うーん。……順に説明すると、ゲートを通ったとき、僕はすぐに違和感を感じたんだ。最初に真壁さんがIDをかざして、その後、赤木部長が。そして、僕がかざした時。ゲートの開閉音が、わずかに……『三連符のようにズレた』。サーバーの応答速度が、ミリ秒単位で低下していたんだ。それで、認証ログがスタックしているってことに気がついて――」

「ま、待ってください!」