++
大手町の高層ビル群が、夕闇に溶け込んでいる。
首都高速を走る帰りのタクシーの後部座席で、怜は窓の外を流れる街灯を眺めていた。
すぐ前の助手席では、赤木が「ぐごごご」と地鳴りのようなイビキをかいて、爆睡している。
今日のプレゼンは、無事に勝利を収めた。
帰り際、九条が放った言葉が、脳裏から離れない。
「――西園寺。お前のやり方は『正攻法』ではないが、結果として、我々は助かった。真壁さん、君のプレゼンも……これまでのどのベンダーより、帝国の未来を正しく描いていた。……素晴らしかったよ。この『Ark』が現実のものとなるのが、楽しみだ」
あれだけ景に怒り狂っていた九条が、最後には景と、そして怜に、力強い握手を求めてきたのだ。
怜は、隣に座る景を盗み見た。彼は、行きのタクシーと同じように、窓の外をじっと眺めている。しかし、その横顔に映る表情は、まるで別人のように見えて。
穏やかに微笑んではいるものの、あの、子どものようなキラキラした輝きは、今の景には、ない。
「……課長」
「ん? 何だい、真壁さん」
景が振り向く。
怜は、その眩いばかりの面立ちを見つめ、エンジニアとして問いかけた。
「帝国のシステム障害……課長は、いつ気づいたんですか? もしかして、最初から?」



