「おい、その書類は何だ」
「……そうですね。例えるなら、『SOSを出したタイタニック号に届いた、正規の救助許可証』でしょうか。真壁さんの美しい設計図を、僕の身勝手で沈めてしまってはいけないので」
(……タイタニック? 救助許可証? ……それって、事後承認ってこと?)
怜が背後から覗き込むと、一枚目の書類には、帝国ホールディングス会長のサインが入った『緊急時システム保守運用・特例承認書』の文字が綴られており――。
景は数枚の書類を極めて丁寧に、九条の前に差し出した。
「どうぞ、これを」
九条はそれを一目見て、絶句する。
「――な……まさか、……会長の、承認だと……? 西園寺、貴様、プレゼンの前からこの状況を予見していたというのか」
九条は震える手で、その『死刑執行の回避命令』とも言うべき書類を握りしめた。
景はさらに一歩踏み込み、九条の眼前で、美しく微笑む。
「さて、九条常務。確かに僕は会議に遅刻しましたが、あなたの『帝国という名の船』を、沈没寸前で繋ぎ止めた。……というわけで、どうでしょう? ここはひとつ、超法規的措置ということで。会議の仕切り直しを、お願いできませんか?」



