瞬間、会議室内がどよめいた。技術者たちは、景の行いがいかに規格外であるのかを、一瞬で理解したのだ。
それは「稼働中のエンジンのピストンを、素手で掴んで直すような狂気の外科手術」。やろうと思ってできるものではない。
九条も、周囲のざわめきから、それがどれだけ異質なことかを察知しだのだろう。眉をひそめ、小さく呻く。
「……バイナリを直接書き換えた、だと?」
九条は景を捉え直した。その瞳に、初めて「脅威」としての色が宿る。
「なるほど。よほど技術に自信があるようだな。だが、ルールを守れないどころか、進んで破るような人間に、我々の『帝国』を任せる価値はない。西園寺景、お前は今すぐ――」
「“出ていけ”、ですか? ですがそれを決めるのは、もう少しだけ待っていただきたい」
「何……?」
――景が、不遜に微笑んだ丁度その時。
ドアリーダーの軽快な音が響き、赤木が飛び込んできた。その手には、何の変哲もないクリアファイルが握られている。
「西園寺、貰ってきたぞ!」
赤木は肩で息をしながら、景にクリアファイルを手渡した。景はそれを受け取り、怒りに震える九条の前で、パラパラと中身を確認する。



