その恋、仕様外につき――鉄壁SEは御曹司の暴走を許さない


 ――ピッ。

 さきほどまで拒絶の「赤」を灯していたドアリーダーが、軽快な電子音と共に、鮮やかな「緑」へと反転する。
 防音ドアのロックが解除され、プシュンと空気の抜ける音が響いた。

 ゆっくりと左右に開く自動ドア。
 その向こうに立っていたのは、金褐色の髪を無造作にかき上げ、額にうっすらと汗を浮かべた――西園寺景、その男だった。
 その後ろには、顔を真っ青にした帝国の情シス社員が、背筋を丸めて幽霊のように従っている。

「皆さん、大変お待たせしました。会議を再開しましょうか」

 何事もなかったかのように、優雅な足取りで室内に足を踏み入れる景。
 そのあまりに場違いな空気に、会議室は異様な沈黙に包まれた。

「……ッ、課長!」

 そんな中、怜は真っ先に景に駆け寄った。
 ひとまず今は、状況を把握するのが先だ。

「どういうことですか!? さっきの通話、システムを直したって……。まさか、許可なく情シスに入り込んだりしてませんよね……!?」

「ああ、真壁さん。遅くなってごめんね。本当はすぐに終わらせるつもりだったんだけど、彼女、思っていたより対人恐怖症(デッドロック)がひどくて。なかなか僕を受け入れてくれなかったんだ」

「技術的な例え話なんて聞いてませんよ! 私が言いたいのはコンプライアンスの話で――」

 語気を強める怜に、景は一瞬きょとんとしたが、すぐに怜の言葉を遮った。
 右手で優雅に怜を制し、声を潜めると、怜にだけ聞こえるように囁く。

「大丈夫。それは心配ないよ。優秀な航海士(デバッガー)が、何とかしてくれるはずだから」

「――え? デバッガーって……、あ、ちょっと、課長!」