九条が怪訝そうに眉を寄せる。
「私が手配したエンジニア? 覚えがないぞ。一体誰だ、そいつは!」
九条はスマホを奪うと、スピーカーモードに切り替えた。
「おい、誰だ、我が社のシステムを弄んでいる外部の人間は!」
騒然とする会議室に、九条の激昂が響く。
すると電話の向こうから、情シスの喧騒と共に、酷く聞き慣れた――今世界で一番ぶん殴ってやりたい男の声が、澄み渡るように響いた。
『――弄んでいる? 心外だな。僕はただ、自身の「正しさ」で窒息しかけていた帝国のシステムに、少しばかり呼吸をさせてあげただけですよ』
「……呼吸だと? いや、そもそも誰なんだ、お前は!」
『僕? 僕は西園寺景と申します。――九条常務。精緻な地図も結構ですが、道が塞がっていては歩けませんよ。……ああ、システムはたった今復旧しましたから。すぐにそちらへ向かいますね。お待たせしてしまい申し訳ありません。ですが、真壁さんの説明は完璧だったでしょう?』
そう。それは、あまりにも、あまりにも無邪気な、西園寺景の声で。
(……ちょっと、嘘でしょ、課長。どういうこと)
信じられない……。
怜は、あまりにも常識外の景の行動に、絶句するほかなかった。



