――再び、景に対する殺意が湧いてくる。
しかし、九条はもはや怜に興味を失ったかのように、椅子を引いて立ち上がった。秘書がすぐさま先回りし、ドアのリーダーにIDカードをかざす。
が、その時だった。
――ブブッ。
本来なら、「ピロリロリン」と軽快な音を鳴らすはずのリーダーから響いたのは、乾いた、低い警告音。
解除されるはずの扉は固く閉ざされたまま、リーダーのランプを不気味な赤に染めている。
室内が、ざわついた。
「……おい、もたもたするな。早くしろ」
九条が秘書に命じるが、どれだけIDをかざしても、リーダーは拒絶の音を繰り返すだけ。
「さっきから何をしているんだ」
「……いえ、その。なぜか、認証が通らなくて。IDが無効だと……」
その言葉を皮切りに、別の役員らが入口に殺到する。しかし、すべてエラー。
パニックが起こりかける中、技術者たちは一斉に各自の端末を叩き始めた。
「おい、Teamsが繋がらないぞ。Wi-Fiの認証が落ちてる」
「通信障害か? 有線LANを試せ」
「誰か、スマホ持ってる奴! 情シスに連絡しろ!」
「内線は!?」



