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会議は驚くほど順調だった。
最初は冷ややかだった技術者たちが、説明を進めるごとに、一人、また一人と瞳を光らせ、椅子を鳴らして身を乗り出す。
彼らが何年も頭を悩ませ、もはや不可能だと諦めていた「巨大システムの統合」という難題。それが、鮮やかなロジックによって、パズルのように組み上がっていったからだ。
「Arkの核心は、グループ三十社のバラバラなシステムを『無理に壊さない』ことにあります。クラウド上に構築したこの共通基盤が、各社のデータをリアルタイムに翻訳・同期する。いわば、帝国専用の『共通言語』を構築するプロジェクトなのです」
怜の説明は、景の描いた天才的な理想論を、泥臭い現場の運用にまで完璧に昇華させていた。
その芸術的な仕様に、説明が終わる頃には、室内の温度は数度上がったかのような熱を帯びていた。
そうして、開始から一時間が過ぎた頃、
「……概要説明は以上です。ここまでで、何かご質問はございますでしょうか」
怜がそう告げた瞬間、さっそく一人がマイクを掴んだ。運輸子会社の技術責任者だ。
「質問です。ご説明のとおりなら、我が社の配送速度の理論値は二倍に跳ね上がることになります。ですが、そのようなことが本当に可能なのでしょうか? データの整合性はどう保証されるのか、詳細を教えてください」
それは「攻撃」ではなく、純粋な「期待」だった。怜は真っ向から、その熱を受け止める。
「可能です。そもそもArkは、各社がバラバラに書き込むデータを、無理にその場で同期させようとはしません」



