「いいか? お前は忘れてるのかもしれないが、西園寺より俺の方が役職は上だ。西園寺は俺が責任を持って探すが、たとえ見つからなくても、最後は俺が責任を取る。そのための『役職』なんだよ、これは」
「……っ」
豪快な笑みの裏にある、赤木の圧倒的な「上司としての覚悟」。それに触れ、怜の心臓がドクンと跳ねた。――赤木は、自分を勇気づけてくれている。
「……赤木、部長」
納得できたわけではない。景への殺意は増すばかりだし、九条常務が許してくれる保証もない。だが、それ以上に、自分がこの二週間、冷めた半額弁当をかき込みながら、メンバーらと積み上げてきた『Ark』を、こんな『迷子』というマヌケな理由で沈没させるわけにはいかなかった。
それに、ここでドタキャンして一番責任を負うのは、他ならぬ戦友・佐藤だ。彼に迷惑をかけるわけにはいかない。
「……わかりました。課長をよろしくお願いします、赤木部長! 私は、佐藤さんと会議室へ向かいます!」
「ああ、その意気だ! 頼んだぞ、真壁!」
怜は、脇に抱えたノートPCを強く締め付けた。もしこれが景のPCだったら。パスワードすら分からないその端末を前に、自分はただ立ち尽くすしかなかっただろう。
(そうよ。赤木部長の言ったとおり、不幸中の幸いだわ……。課長がいなくても、私がこのArkを、帝国に認めさせてやる……!)
「行きましょう、佐藤さん!」
「は、はい……!」
――こうして、怜は西園寺景不在という絶望的な状況下で、たった一人、戦場(会議室)へと向かうシャトルエレベーターに飛び乗ったのである。



