その恋、仕様外につき――鉄壁SEは御曹司の暴走を許さない


 怜は、どうして赤木がそんなことを聞くのか分からず、一瞬沈黙する。
 赤木の瞳に浮かぶのは、いつもの豪快な笑いではなく、百戦錬磨の営業本部長としての冷徹な輝き。

「――は、はい。……私のですけど」
「ならログインはできるな。資料もすべて入っているな?」
「それは、もちろん。……プレゼンは、もともと私のパソコンで行う予定で……って、まさか、赤木部長!」
「ああ。その『まさか』だ」

 ニヤリと口角を上げた赤木の笑みに、怜は悟る。赤木は、自分にプレゼンをしろと言っているのだ。

「そんな、無理ですよ! 確かに内容はすべて頭に入っていますし、説明もできますけど、責任者が不在なんてクライアントに失礼すぎます!」

「なに、西園寺は急な腹痛でトイレに籠っているとでも言っておけ。会議終了までに見つかれば問題ないだろう」

「いや、問題ありますって! 私は何の権限もない、ただの主任ですよ!? もし課長が最後まで見つからなかったら、我が社の信用に関わります!」

「はははは! お前は変なところで真面目だなあ、真壁!」

 赤木は愉快そうに、怜の背中をバシバシと叩いた。その衝撃で、怜の心に溜まっていた恐怖が、一瞬だけ弾け飛ぶ。