「あ……お、おはようございます、佐藤さん」
「今日はよろしくお願いしますね、真壁さん! は~、実は僕、昨日からずっと緊張してて一睡もできなかったんですよ。きっと真壁さんは緊張なんて全然しないんでしょうね、羨ましいなぁ」
緊張? 冗談じゃない。緊張なら、タクシーの中からずっと継続中だ。どころか、今この瞬間、私の胃液は帝国の全基幹システムを溶かせるほど酸性度を高めている。この非常事態を、どうやって目の前の彼に伝えればいいのか。
「――あ、会議室は三十二階です。あちらの上層階用シャトルエレベーターから……って、…………あれ?」
佐藤の視線が、景がいるはずだった「不自然な空白」へと泳ぐ。
「西園寺さんがいらっしゃらないようですが? お手洗いですか?」
怜は背中にじっとりと嫌な汗をかきながら、引き攣った笑みを浮かべた。
「いえ……その。実は……はぐれてしまったようで……ゲートは確かに一緒に通ったんですけど」
「……えっ?」



