その恋、仕様外につき――鉄壁SEは御曹司の暴走を許さない


 少し前、三人の乗ったタクシーは、無事にこの帝国ホールディングス本社へと辿り着いた。
 地上五十二階建て。ビル内部には、専用のクリニックやジム、複数の社員食堂などがあり、一つの「街」として完結した巨大な建物だ。

 タクシーを降りた三人は、鉄壁の守衛窓口で厳重な手荷物検査を受け、スマホを預けると、引き換えに『IDカード』を受け取った。それをゲートにかざし、現場担当者と落ち合うため、ゲートから真っすぐに、このメインロビーへとやってきたのだ。それなのに……。

(あのバカ課長……! あれほど私の傍を離れるなと言ったのに! 首輪でもつけて鎖で繋いでおけば良かった!)

 怜は、震える手で自分のポケットを叩いた。スマホで連絡を取ろうとして、すぐに絶望する。
 そうだ、スマホはさっき守衛に預けてしまった。連絡手段は、完全に断たれている。

「探さなきゃ……。まだ、そんなに遠くには行っていないはず。……赤木部長、私、課長を探してきます!」

 急いで見つけなければ、会議に間に合わない。
 怜は半ばパニック状態で、今来た道を引き返そうとした――だが、その時、聞き慣れた声が届く。

「おはようございます! 赤木さん、真壁さん!」

「――ッ」

 怜はびくりと全身を硬直させた。

 振り返ると、帝国側の現場担当者、佐藤が笑顔で手を挙げていた。会社こそ違うが、これまで二週間、共に不眠不休で仕様を練り上げてきた、いわば『同じ泥を啜った戦友』だ。
 しかし――彼がここにいるということは、そう。時間切れ(タイムオーバー)である。