「……ちょっと、嘘でしょ、課長!?」
帝国ホールディングス本社、天井高十二メートルの広大なメインロビー。その中央で、怜は絶叫に近い声を上げた。
さっきまで、「天井の意匠が中世の神殿のようだね!」などと呑気に感心していた景の姿が、忽然と消えていたからだ。
「あ、赤木部長! 課長、さっきまでそこにいましたよね!?」
「ああ、ゲートを抜けるまでは一緒に……。西園寺くん! 西園寺くーん!?」
流石の赤木もこれには焦ったのか、慌てて周囲を見渡す。だが、返ってくるのは、磨き上げられた大理石の壁に跳ね返る自分たちの声と、足早に行き交う帝国従業員たちの、冷ややかで訝しげな視線だけだ。
「信じられない……ゲートから一本道だったのに……。逆にどうしたら、はぐれられるわけ?」
――怜は絶望的な気分で、数分前の記憶を必死に手繰り寄せる。



