(会議はきっと大丈夫。どういう理屈かは分からないけど、この男は人前に立つと、まるで人が変わったようになるから。……問題は、その前後よ。休憩時間も油断はできないわ)
怜が死地に向かうような決意を固めていると、不意に、景が無邪気な声を上げた。
「真壁さん! あれが噂に聞く、日本の『サイバーコマンド』の基地かい!?」
「……はぁ?」
怜は思わず、景が上司であることを忘れ、ドスの効いた声で返してしまう。
「サイバー……何ですか?」
「サイバーコマンドだよ。あそこから、日本中のネットワークを悪しきハッカーから守るために、選ばれしエリートたちが二十四時間体制で戦っているんだろう? 素晴らしいね、まるでデジタル時代の騎士団だ」
「……デジタル……騎士……」
だいぶ意味がわからない。だが、目の前の景はどこまでも真剣だ。
仕方なく、怜は景の視線を追い、窓の外を見上げた。すると、そこにそびえ立っていたのは当然、『サイバーコマンド』なるものの基地ではない――そう、あれは。
「……課長。大変言いにくいのですが、あれは防衛省の通信塔です。騎士団はいませんし、戦ってません。いるのは、普通の公務員の方々です」
「えっ、そうなのかい!? 僕はてっきり……」
「……てっきり……というか。そもそも、その『噂』とやらはどこから仕入れてくるんですか? アメリカではそういうのが流行ってたんですか?」
「いや……、……特に流行っていたわけでは」



