「んー、いい匂い! 疲れた身体にはやっぱり揚げ物よね! っと、その前に……」
怜はスマホを手に取り、銀行アプリを立ち上げた。
長野の叔父の家から、国立大学の理工学部に通っている、弟・健人への仕送りをしなければ。
彼女は、送金金額欄に、迷いなく「100,000」の数字を打ち込み、「決定」ボタンを押しかけた――その時。
送金画面が、ラインの着信画面に切り替わった。噂をすれば、健人からだ。
「……もしもし、健人? どうしたの、電話かけてくるなんて珍しい」
『あ、姉ちゃん。……今バイト終わったとこで。……その、ちょっと相談があるんだけど』
怜はすぐにピンときた。これは仕送りの増額要請に違いない。
「わかった、お金キツイんでしょ? いいよ、今丁度振り込むところだったから。いくら必要?」
『……ん。二万……いや、三万、かな。ごめん、姉ちゃん。独り暮らしで大変なのに』
「ええー、何遠慮してんのよ。私がいくら稼いでると思ってるの? それくらい誤差でしかないから。それより、あまりバイトばっかりしてないで、ちゃんと勉強しなさい。あと、叔父さんや叔母さんに迷惑かけちゃ駄目よ。お手伝いもしっかりするのよ。ボーナス出たら、お小遣い弾んであげるから」
『いいよ、そこまでしてくれなくて。……手伝いもちゃんとしてるし。お金は、就職したら返すから。ほんと……ありがと』
「何言ってるの。ほんとに、お金のことなんて気にしなくていいから。じゃあ、切るからね。気をつけて帰るのよ。変な人にホイホイついていかないよーに」
『いや、俺もう二十歳だから。姉ちゃんこそ変な男に引っかかるなよ? ……じゃあ、また』
「はーい。おやすみ~」



