十五分後、野方駅を降りた怜は、いつものルーティンに入った。
駅前の商店街。賑やかな惣菜屋の呼び込みを華麗にスルーし、二十四時間営業の激安スーパーへ向かう。
「……三十パーセント引き。いや、この時間はもうすぐ半額シールが来るはず」
トレンチコートの襟を立て、獲物を狙う鷹のような眼差しで、カツ丼のパックを見守る。
数分後、店員の手に持たれた黄色いシールが、怜の狙い通りの「半額」を刻んだ。怜は瞬時に手を伸ばす。
「確保……!」
これが、エリートSE、真壁怜の真の姿だ。
野方の環七沿いにある、家賃五万二千円の四畳半。今にも朽ち果てそうな築四十年の木造ボロアパート――そこが、上京してから、五年間住み続けている、彼女の城。
「ただいまー」
返事を返してくれる人間はいないが、習慣的なものだ。
怜はトレンチコートを脱いでハンガーに掛けると、商店街でゲットした「半額カツ丼」のパックを開けた。
電子レンジで温め直すと、衣の脂っこい匂いが、西新宿の気取ったな記憶を上書きしていく。



