君が消えた日のことを、私は覚えてる。

放課後。

私は職員室の前に立っていた。

帰る生徒の足音が遠ざかる。
廊下はやけに静かだった。

扉の隙間から、先生たちの声が聞こえる。

「……仕方なかったんだ」

低い声。

「これ以上、騒ぎになると困る」

別の声が重なる。

心臓が強く鳴る。

そっと、扉を押す。

中には担任と、見慣れない大人が二人。

机の上には、封筒と一枚の紙。

白い紙の端に、見覚えのある字。

震える手で、それを見つめる。

そこには、短い文章が書いてあった。

『ごめん。もう疲れた。』

息が止まる。

その下に、小さく名前。

確かに、三十八番の名前。

「それを見るな」

先生の声が、今まで聞いたことのないほど低い。

紙はすぐに封筒へ戻される。

「これは学校の問題だ」

“問題”。

その言葉が、鋭く刺さる。

問題?

あれは、
ただの“問題”だったの?

足元が揺れる。

世界が、ぐらりと傾く。

――彼は、本当に消されたんだ。

――最初からいなかったことに、されている。

なぜ先生までやるのだろうか?