君が消えた日のことを、私は覚えてる。

三十八番。

その数字を頭の中で何度もなぞる。

窓際の、一番後ろの席。
午後になると、光がまぶしくて目を細めていた。

笑うとき、少しだけ肩をすくめる癖。
消しかすを集めて、小さな山を作る指先。

私は、知っている。
ちゃんと、覚えている。

ある日の放課後。

教室には私と彼だけが残っていた。
部活に行くふりをして、私は鞄を抱えたまま立っていた。

そのとき、彼がぽつりと聞いた。

「もし俺がいなくなったらさ」

冗談みたいな口調だった。
でも、目だけは笑っていなかった。

「……覚えててくれる?」

私は、うまく答えられなかった。

ただ曖昧に笑って、
「なにそれ」と流してしまった。

あのとき、ちゃんと聞けばよかった。

ちゃんと、見ればよかった。

教室の空白が、じわりと広がっていく気がした。

――私だけが、遅すぎる。