君が消えた日のことを、私は覚えてる。

私は立ち上がって、その空白に近づいた。

床だけが、少し色が違う気がする。机が置かれていた跡みたいに、四角く、薄く。

「ここ……誰か座ってたよね」

もう一度言うと、隣の席の子が笑った。

「朝からなに言ってんの?」

その笑い方が、妙に軽かった。

黒板の横に貼られた時間割。
出席番号は三十七番まで。

でも私は知っている。
三十八番があったことを。

指先が震える。

ポケットの中のスマホを取り出して、写真フォルダを開く。
先週のクラス写真。

みんな笑っている。
でも右端に、白くにじんだ空間がある。

そこにいたはずの人の形だけが、消しゴムでこすったみたいに曖昧になっている。

息が浅くなる。

私だけが、おかしいの?
それとも――

世界のほうが、何かを隠しているの?