君が消えた日のことを、私は覚えてる。

教室は、いつもより静かだった。

朝の光が窓から差し込んでいるのに、どこか色が薄い。笑い声も、椅子を引く音も、遠く感じる。

私は自分の席に座って、まっすぐ前を見た。

――そこにあるはずの机が、なかった。

昨日まで確かにあった机。
そこに座っていた人。
笑っていた顔。

でも、空白だけが残っている。

「……ねえ」

小さくつぶやいてみる。

「ここに、もう一つ机なかった?」

クラスメイトは不思議そうな顔をする。

「なに言ってるの?」

黒板の横の名簿を見上げる。
一番下にあったはずの名前は、最初から存在しないみたいに、きれいに消えていた。

胸の奥が、ひやりと冷たくなる。

――私は、誰を覚えているんだろう。

私はどうしても思い出せなかった。
たしかに何かがそこにあったのに,,,