青春×6

入学式が終わって、教室に戻ったあと。

私は席に座って、そっと深呼吸をした。
緊張で背中がちょっとだけ固い。

そのとき、ふと気配を感じて後ろを見た。

メガネをかけた女の子が、静かにノートを机に置いていた。

姿勢がよくて、真面目そう。
なんか……頭よさそう。

私は少し迷ったけど、思いきって振り返った。

「ねえ、名前なんていうの?」

その子は一瞬びっくりした顔をしてから、

「星愛(せいあ)かおる。」

と、落ち着いた声で答えた。

やっぱり真面目そうだな、って思ったその次の瞬間。

「これ見て。」

そう言って机の上に置いたのは、普通のペンケース……に見えた。

でも。

「……ん?」

よく見ると、下にちっちゃい足がついてる。

「え、足!?!?」

「歩くよ。」

「歩くの!?」

かおるは真顔で、ペンケースをちょんちょんって動かした。

机の上を、ちょこちょこ進む“足つきペンケース”。

「今、入学式疲れたーって言ってる。」

「しゃべるの!?」

真面目そうな顔で、めちゃくちゃふざけてる。

そのギャップがおかしくて、
私は声を出して笑っていた。

さっきまであった不安も緊張も、
全部どうでもよくなるくらい。

“あ、この子となら大丈夫かも。”

後ろの席の星愛かおるは、
中学で一番最初にできた、特別な友達になった。