婚約者の愛が重すぎるのでわからせようと思います!




同性に対してもこれなのだ。
異性に対してとなると…。

コンコンコンッとタイミングよく扉をノックする音がこの部屋に響く。
ルーカスの「どうぞ」と言う柔らかな返事の後、私たちの前に現れたのは若い男の従者だった。
軽く挨拶をしてこちらにやって来た従者が、私を見て丁寧に会釈をする。

…あ。

その姿に、私は背中に嫌な汗をかき始めた。

見たことのない同世代くらいの彼は、きっと新人か何も知らない人だ。
ルーカスの婚約者、ゾーイ・アシュレイの前に現れ、目を合わせてしまうとは…。

まだ何も起きていないというのに、すぐ未来で起きるであろう最悪の事態を予想してしまい、頭が痛くなる。
同じようなことをしてしまった〝異性〟の従者がどうなってしまったか。
その末路を私は何度も見て来たし、阻止もしてきた。

心の中で頭を抱える私なんて知る由もない従者とルーカス。
2人は淡々と何か大事そうな会話を繰り広げている。
それからある程度話し終えると、従者はさっさとこの部屋を後にした。
もちろん、最後もしっかり私の目を見て会釈して。

彼の行動は一般常識的には正しい。
仕事の件で訪れたとはいえ、主人の婚約者にもしっかりと挨拶をしなければ、失礼に値するのが普通だ。
…が、ここでは、いや、ルーカスだけにはこれが例外になるのだ。

消えていった背中に、胸騒ぎを覚えていると、ルーカスは甘い声音で言った。