仕事中のルーカス、怖いなぁ。
きっとあの綺麗な顔で目の前の商人を凄んでいるのだろう。
美しいからこそ、取り繕うことをやめたルーカスはかなり冷たく、怖いものがある。
この状況で、私に「会いたい」など言うわけもなく。
早速、飛んで行ってやろう!と先ほどまで意気込んでいたが、とりあえずその気持ちは消えた。
……刺繍でもしようかな。
暇つぶしに、と映像を流したまま、刺繍の準備を始める。
そして棚から裁縫セットを出し、ソファへと向かう途中ーーー。
『…あぁ、会いたいよ、ゾーイ』
映像から信じられない言葉が聞こえてきた。
い、今ー!?
今、あの氷のように冷え切った場面で、私に会いたいって言った!?
ど、どうして!?あの会話の流れで何故!?
突然のことにあわあわして、手に持っていた裁縫セットをぶちまけそうになる。
だが、それを私はなんとか耐え、一度深呼吸をした。
お、落ち着いて。
落ち着くのよ、ゾーイ・アシュレイ。
私は今、婚約者であるルーカスをわからせようとしているわ。
そのまたとないチャンスが今、来たのよ。
…このとんでもない空気の仕事中に?



