言えない。言わない。

引っ越してきて、三日目の夕方。

いつも通り、月乃は門のところにいた___

玲央は庭でボールをつき、月乃は空を見る。


玲央「今日も。見るだけ?」


月乃「……うん」


玲央「つまんなくないの?」


首を横に振りながら


月乃「毎日ちがうから」


玲央「なにが?」


月乃「いろ。今日、ちょっと白いね」


玲央「どこ?」


月乃は指で空をなぞる。

違いはよくわからない。

でも、隣で見上げている横顔は、やけに真剣だ。


玲央「こっちきて」


月乃は少し迷ってから、柵の扉を開けた___


玲央「やってみる?」


差し出されたボールは少し重かった。

ぽん、とついたつもりが横に転がった。


月乃「むずかしい」


玲央「ちがうよ、こう」


玲央は月乃の手の上に、自分の手を重ねた。ほんの一瞬。


ぽん。


今度はちゃんと跳ねた。


月乃「できた」


玲央「できたね」


月乃「玲央」


玲央「なに?」


月乃「ここ、すき」


指差したのは空。


玲央「なら、ずっといろよ」


約束ではない。

でも、月乃はうなずいた。