言えない。言わない。

ドアが、軽くノックされた。


玲央ママ「起きた?」


玲央「……うん」


視線が、すぐ机の上に落ちる。


玲央ママ「それ、つーちゃんから?」


玲央「……うん。誕生日だからって」


青い空。

少しだけ、目がやわらぐ。


玲央ママ「空なんだ」


玲央「うん」


玲央「……好きなんだって」


玲央ママは、くすっと笑う。


玲央ママ「自分の好きなもの、くれたんだね」


やわらかい声。


玲央ママ「大事にしなさい」


玲央ママ「好きなものをくれるって、簡単じゃないんだから」


玲央は少しだけ、顔を上げた。


玲央ママ「飾る?」


玲央「……うん」


玲央ママは、小さな写真立てを持ってきた。

写真をそっと入れる。

机の端に置いた。

朝の光が、ガラスに反射する。


玲央ママ「いいじゃない」


それだけ言って、部屋を出ていった。

玲央は、写真をもう一度見た。

「大事にしなさい」

さっきの声が、少しだけ残っている。

写真立ての中の空は、まっすぐだった。