それから、何日かあと。
雫はお母さんと一緒に、公園へ来ていた。
あの日と同じ道を通って
同じブランコの前まで歩いていく。
見慣れた景色のはずなのに
どこかだけ違って見えた。
探すみたいに視線を動かすけれど
そこにはもう、あのときの姿はない。
滑り台の上も、砂場のまわりも
ひとつずつ確かめるように見ていく。
それでも、どこにも見つからなかった。
また別の日にも来てみた。
同じ時間に
同じ場所で少し立ち止まってみたけれど
やっぱり会えなかった。
雫の手には、あの日の傘が残っている。
持ち帰ってからも返せないまま
そのままここにある。
ベンチに座って、膝の上にそっと置く。
指先で柄の部分をなぞりながら
小さく口を開いた。
雫「知らないのに傘かしてくれるの。
すごいね。」
その言葉に、隣で聞いていた
お母さんがやわらかくうなずく。
考えるように視線を遠くへ向けてから
静かに返した。
雫ママ「そうね。」
雫ママ「困ってる人に
手を差し出せる人って、素敵な人だよね。」
その言葉を聞いて
雫はゆっくり空を見上げる。
あの日と同じように
雲が流れているのが見えた。
雫「あの日、雨が降ってこなかったら」
雫「……あの子に会わなかったでしょ?」
お母さんは小さくうなずいた。
そのまま、言葉を重ねずに受け取った。
雫ママ「そうね。」
その答えに、雫はやわらかく笑った。
思い出すみたいに
手の中の傘をぎゅっと握る。
雫「私、雨の日好きになったの。」
雫ママ「そうなの?」
雫「うん。」
短く返してから、少し間を置く。
言葉を探すみたいに、視線を落として続けた。
雫「あの日のこと思い出すから。」
そのままもう一度、傘の柄を握り直す。
指先に残る感触を確かめるみたいに
力が入った。
雫「やさしい気持ちになるんだ。」
静かにこぼしたあと、息を整える。
そのまま顔を上げて、まっすぐ前を見た。
雫「……だからね。」
雫「私も、そんなふうになりたい。」
言い切ったあとも、そのまま動かない。
風が吹いて、木の葉がかすかに揺れた。
その音の中に、あの日の雨の気配が
まだどこかに残っているような気がした。
雫はお母さんと一緒に、公園へ来ていた。
あの日と同じ道を通って
同じブランコの前まで歩いていく。
見慣れた景色のはずなのに
どこかだけ違って見えた。
探すみたいに視線を動かすけれど
そこにはもう、あのときの姿はない。
滑り台の上も、砂場のまわりも
ひとつずつ確かめるように見ていく。
それでも、どこにも見つからなかった。
また別の日にも来てみた。
同じ時間に
同じ場所で少し立ち止まってみたけれど
やっぱり会えなかった。
雫の手には、あの日の傘が残っている。
持ち帰ってからも返せないまま
そのままここにある。
ベンチに座って、膝の上にそっと置く。
指先で柄の部分をなぞりながら
小さく口を開いた。
雫「知らないのに傘かしてくれるの。
すごいね。」
その言葉に、隣で聞いていた
お母さんがやわらかくうなずく。
考えるように視線を遠くへ向けてから
静かに返した。
雫ママ「そうね。」
雫ママ「困ってる人に
手を差し出せる人って、素敵な人だよね。」
その言葉を聞いて
雫はゆっくり空を見上げる。
あの日と同じように
雲が流れているのが見えた。
雫「あの日、雨が降ってこなかったら」
雫「……あの子に会わなかったでしょ?」
お母さんは小さくうなずいた。
そのまま、言葉を重ねずに受け取った。
雫ママ「そうね。」
その答えに、雫はやわらかく笑った。
思い出すみたいに
手の中の傘をぎゅっと握る。
雫「私、雨の日好きになったの。」
雫ママ「そうなの?」
雫「うん。」
短く返してから、少し間を置く。
言葉を探すみたいに、視線を落として続けた。
雫「あの日のこと思い出すから。」
そのままもう一度、傘の柄を握り直す。
指先に残る感触を確かめるみたいに
力が入った。
雫「やさしい気持ちになるんだ。」
静かにこぼしたあと、息を整える。
そのまま顔を上げて、まっすぐ前を見た。
雫「……だからね。」
雫「私も、そんなふうになりたい。」
言い切ったあとも、そのまま動かない。
風が吹いて、木の葉がかすかに揺れた。
その音の中に、あの日の雨の気配が
まだどこかに残っているような気がした。
