言えない。言わない。

それから、何日かあと。

雫はお母さんと一緒に、公園へ行った。

あの日と同じブランコ。

同じ道。

でも。

その子は、いなかった。

雫は少しだけ公園を見回す。

滑り台。

砂場。

どこにもいない。



また、別の日も来てみた。

でも、会えなかった。

雫の手には、あの日の傘が残っている。

公園のベンチに座りながら、雫がぽつりと言った。


雫「知らないのに傘かしてくれるの。すごいね。」


雫ママ「そうね。」


雫ママ「困ってる人に手を差し出せる人って
素敵な人だよね。」


雫は空を見上げた。


雫「あの日、雨が降ってこなかったら
あの子に会わなかったでしょ?」


雫ママ「そうね。」


雫は少しだけ笑った。


雫「私、雨の日好きになったの。」


雫ママ「そうなの?」


雫「うん。」


雫「あの日のこと思い出すから。」


雫は傘の柄をぎゅっと握る。


雫「やさしい気持ちになるんだ。」


雫「……だからね。」


雫「私もそんなふうになりたい。」