午後の光は、やわらかく床に広がっていた。
月乃は玄関で靴を履き
かかとを軽く鳴らしてから立ち上がる。
今日は、ランドセルを見に行く日。
車に乗り込むと、窓から差し込む光が
まぶしく感じられて
外の景色もどこかいつもより淡く見える。
お店のドアが開くと
外とは違うひんやりとした空気が頬に触れた。
静かな明るさの中に
並ぶランドセルたちが目に入った。
整然と並んだそれらは
どれも光を受けてやわらかく反射していた。
月乃「……いっぱいある」
月乃ママ「好きなの、背負ってみたら?」
月乃はゆっくりと歩きながら棚を見ていき
その中でひとつ
水色のランドセルに手を伸ばした。
空みたいな色だと思いながら
指先で軽く触れてから持ち上げた。
月乃「これ、きれい」
店員さんに背負わせてもらい
肩に乗る重みを感じながら鏡の前に立つと
水色が視界いっぱいに広がった。
顔を上げて鏡の中の自分を見た。
月乃「……ちゃんとできるかな」
月乃ママ「どうしたの?」
月乃「……ううん、なんでもない」
そう言って視線を外さないまま
肩のベルトに触れた手をゆっくりと下ろす。
鏡の中の自分を見続けながら
そのままじっとしていた。
月乃「……あれ」
棚の端に置かれた
やわらかい色のランドセルが目に入った。
白でもなく、黄色でもないその色に
自然と足がそちらへ向いた。
月乃「……見ていい?」
月乃ママ「もちろん」
水色を外してもらい
代わりにそのランドセルを背負うと
肩に乗る重みは同じはずなのに
手が止まった。
そのままベルトをぎゅっと握り
もう一度鏡の前へ戻った。
鏡の中の自分を見つめたまま、少し近づいた。
月乃「……星くん」
小さくこぼれた声に
父と母が一瞬だけ顔を見合わせるが
何も言わなかった。
月乃はベルトを持ったまま視線を落とさず
しばらくそのまま立っていたあと
ゆっくりと口を開いた。
月乃「……これにする」
はっきりとした声だった。
父がうなずき、母がやわらかく微笑んだ。
月乃はもう一度鏡の中の自分を見て
小さくうなずいた。
その手はまだベルトを握ったままで
やわらかい光が表面に静かに乗っている。
ずっと近くにあるみたいな色だった。
月乃は玄関で靴を履き
かかとを軽く鳴らしてから立ち上がる。
今日は、ランドセルを見に行く日。
車に乗り込むと、窓から差し込む光が
まぶしく感じられて
外の景色もどこかいつもより淡く見える。
お店のドアが開くと
外とは違うひんやりとした空気が頬に触れた。
静かな明るさの中に
並ぶランドセルたちが目に入った。
整然と並んだそれらは
どれも光を受けてやわらかく反射していた。
月乃「……いっぱいある」
月乃ママ「好きなの、背負ってみたら?」
月乃はゆっくりと歩きながら棚を見ていき
その中でひとつ
水色のランドセルに手を伸ばした。
空みたいな色だと思いながら
指先で軽く触れてから持ち上げた。
月乃「これ、きれい」
店員さんに背負わせてもらい
肩に乗る重みを感じながら鏡の前に立つと
水色が視界いっぱいに広がった。
顔を上げて鏡の中の自分を見た。
月乃「……ちゃんとできるかな」
月乃ママ「どうしたの?」
月乃「……ううん、なんでもない」
そう言って視線を外さないまま
肩のベルトに触れた手をゆっくりと下ろす。
鏡の中の自分を見続けながら
そのままじっとしていた。
月乃「……あれ」
棚の端に置かれた
やわらかい色のランドセルが目に入った。
白でもなく、黄色でもないその色に
自然と足がそちらへ向いた。
月乃「……見ていい?」
月乃ママ「もちろん」
水色を外してもらい
代わりにそのランドセルを背負うと
肩に乗る重みは同じはずなのに
手が止まった。
そのままベルトをぎゅっと握り
もう一度鏡の前へ戻った。
鏡の中の自分を見つめたまま、少し近づいた。
月乃「……星くん」
小さくこぼれた声に
父と母が一瞬だけ顔を見合わせるが
何も言わなかった。
月乃はベルトを持ったまま視線を落とさず
しばらくそのまま立っていたあと
ゆっくりと口を開いた。
月乃「……これにする」
はっきりとした声だった。
父がうなずき、母がやわらかく微笑んだ。
月乃はもう一度鏡の中の自分を見て
小さくうなずいた。
その手はまだベルトを握ったままで
やわらかい光が表面に静かに乗っている。
ずっと近くにあるみたいな色だった。
