「臼井さん。ちょっといい?」
やれやれと両手を高く伸ばしかけたその時、突然自分の名前を呼ばれ、おそるおそる振り向くと、吉沢課長が眉毛を八の字にしながら紙の束を私に手渡してきた。
「申し訳ないんだけど、この資料、今日中にまとめてもらえるかなあ?明日の午前中までに必要なんだよねえ。」
「はい。大丈夫です。」
「ほんと、すまないねえ。」
「いえ。」
吉沢課長、仕事の依頼ありがとうございます。
だって、あの人も残業しているから・・・
私は視線を、隣の課の一番奥の席へそっと向ける。
そこには密かに憧れている和木坂要課長が、いつものように厳しい顔で電話応対している。
その姿を見るだけで胸がときめき、もやもやした気持ちがあっという間に消えていく。
私にとって和木坂課長は、それくらいかけがえのない男性なのだ。



