僅かな距離

その時だった。

「月島さん。」

不意に名前を呼ばれる。

陽依は肩を震わせながら振り返った。

クラスメイトの女子だった。

「あのさ、このプリント回して。」

「……あ、うん。」

陽依は慌てて受け取る。

それだけのこと。

本当にそれだけのことなのに。

心臓はまだ早く脈打っている。

最近は誰かに話しかけられるだけで緊張してしまう。

何か言われるんじゃないか。

何かされるんじゃないか。

そんな考えが先に浮かんでしまう。

前はこんなんじゃなかったのに。

陽依は小さく俯いた。

そんな自分が嫌だった。

弱くなっていく自分が嫌だった。