僅かな距離

それなのに。

心のどこかでは。

一度だけでもいいから。

「大丈夫か」

と聞いてほしいと思っている自分がいた。

その矛盾が何より苦しかった。

期待したくないのに期待してしまう。

頼りたくないのに頼りたくなってしまう。

そんな自分が嫌だった。

だから陽依はそっと拳を握る。

誰にも気づかれないように。

爪が掌に食い込むくらい強く。

そして心の中で何度も繰り返す。

大丈夫。
大丈夫。

今日も一人で乗り切れる。

そう言い聞かせなければ、今にも全部が崩れてしまいそうだった。