僅かな距離

そして。

「月島陽依。」

名前が呼ばれる。

その瞬間。

肩が勝手に震えた。

自分でも驚くくらい大きく反応してしまった。

慌てて息を飲み込む。

周りには気づかれていないだろうか。

変に思われていないだろうか。

そんなことばかりが気になる。

「……はい。」

なんとか声を出す。

けれど思った以上に声が掠れていた。

喉が締め付けられる。

視線を上げる勇気はなかった。

月城がどんな顔をしているのかも見られなかった。

見たらきっと駄目だった。

昨日まで必死に作っていた壁が崩れてしまいそうだった。