僅かな距離

一人になった瞬間、膝が震えた。
でも、座り込むわけにはいかない。

誰かに見られたら、
また何か言われる。

陽依は、
深く息を吸って、
何事もなかった顔を作った。

――泣かない。
――声を出さない。

先生がいない場所では、
それが一番の正解だった。

翌日から、
いじめはもっと“上手く”なった。

見えない。
聞こえない。
証拠が残らない。

でも、確実に伝わる。

「ここに、お前の居場所はない」

そう言われ続けている気がして、
陽依は、だんだん顔を上げなくなっていった。