僅かな距離

ホームルームが始まる。

担任の月城翔平が教室へ入ってくる。

いつもと変わらない朝。

いつもと変わらない光景。

そのはずだった。

なのに陽依は顔を上げることができなかった。

見たくなかった。

見てしまったら苦しくなるから。

優しくされたら困るから。

期待してしまうから。

だから机の上だけを見つめ続ける。

木目の傷。

シャーペンで書かれた落書き。

そんなものをぼんやり眺めていた。

出席確認が始まる。

一人ずつ名前が呼ばれていく。

聞き慣れた声が教室に響く。

その声を聞くたびに胸が少しだけ痛んだ。