僅かな距離

何かを抱えている人間の背中だった。

誰にも助けを求められず。

一人で耐え続けている人間の背中だった。

「……頼れよ。」

思わず零れる。

届くはずのない言葉。

窓ガラス越しの独り言。

けれど。

その背中は振り返らない。

当然だ。

聞こえていないのだから。

月城は目を閉じた。

胸の奥に妙な焦りが広がる。

嫌な予感がしていた。

教師の勘と言えばそれまでだ。

だが。

これまで何度も生徒を見てきた経験が告げている。
月島は限界に近い。
そして。
限界に近づいた人間ほど。

「大丈夫です」

と笑うことを知っていた。