僅かな距離

空き教室を出た頃には、外はすっかり夕暮れ色に染まっていた。

西の空には赤みを帯びた光がわずかに残っているものの、校舎の影は長く伸び、辺りは少しずつ夜の気配をまとい始めている。

陽依は重い足取りで廊下を歩いていた。

まるで体の中に鉛でも流し込まれたかのように、一歩踏み出すたびに足が重く感じる。

胸の奥も苦しかった。

呼吸はできているはずなのに、上手く息が吸えない。

さっきまで空き教室で交わされていた言葉が、何度も頭の中で繰り返される。

『二度と近づかないで。』

『先生も迷惑だと思う。』

『勘違いしないで。』

その一つひとつが、まだ胸の中に刺さったまま抜けない。

陽依はぎゅっと鞄の持ち手を握りしめた。

指先が白くなるほど強く握っていることに、自分でも気づいていなかった。