僅かな距離

放課後。
帰りのホームルームが終わる。

生徒たちが次々と教室を出ていく中、陽依だけは席に座ったまま動けずにいた。
窓の外は少しずつ夕暮れ色に染まり始めている。
それなのに、陽依の時間だけが止まったままだった。

行きたくない。
本当に行きたくない。

でも、行かなかったらどうなるのか分からない。
先生に写真を送られるかもしれない。
変な噂を流されるかもしれない。
考えれば考えるほど息が苦しくなる。

陽依はゆっくり立ち上がった。
震える指で鞄を持ち廊下を歩く。
足音だけがやけに大きく響いた。

指定された場所は旧校舎の空き教室だった。

普段はほとんど使われていない。

放課後になれば誰も来ない。

助けを呼んでも気づかれないような場所。