僅かな距離

昨日の出来事が頭をよぎる。

屋上へ続く階段。

泣いてしまった自分。

月城先生。

全部が一瞬で蘇った。

「別に……」

なんとか絞り出した声は、自分でも驚くほど小さかった。

しかし女子は鼻で笑う。

「嘘。」

即答だった。

まるで最初から信じる気などないように。

「最近ずっと気にかけられてるよね?」

「違う。」

陽依は反射的に否定する。

だが女子たちは納得しない。

「違わないじゃん。」

その言葉には、はっきりとした棘があった。

「この前も二人で話してたし。」

「屋上の階段のところ。」

陽依の血の気が引く。

見られていた。

あの日。
誰もいないと思っていた場所で。
誰にも知られていないと思っていた時間を。
誰かが見ていた。