僅かな距離

陽依の口からこぼれた、

「……苦しい」

その言葉を聞いた瞬間。
月城は何かを言おうとした。

けれど。
陽依は顔を上げなかった。
涙を拭い、震える足で立ち上がる。

「月島――」

呼び止める声。

でも陽依は首を振った。

「ごめんなさい」

かすれた声だった。

「やっぱり……無理です」

月城が一歩踏み出す。

しかし陽依は後退った。

「今日は帰ります」
「待って」
「ごめんなさい」

そう言い残し、陽依は逃げた。

結局、何も話さないまま。
何も伝えないまま。