僅かな距離

四月。
体育館に集められた生徒たちは、ざわざわと落ち着かなかった。

「新しい体育の先生だって」
「若くない?」
「当たりっぽくない?」

そんな声の中、私は一人、壁にもたれて座っていた。
誰が来ようと、関係ない。
そう思っていた。

壇上に立ったのは、背の高い男の人だった。
ジャージ姿で、少し緊張したように笑う。

「今日から体育を担当します、月城翔平です」

その声は、体育館に静かに響いた。

「運動が得意な人も、苦手な人も、ここでは同じです。
無理に頑張らなくていい。怪我しないことが、一番大事」

よくある挨拶。
そう思った。

でも――

「体育が嫌いな人も、来るだけで十分です」

その一言に、胸が少しだけ引っかかった。

だけど
優しい大人ほど、あとで一番、何もしてくれない。