僅かな距離

陽依の中で最後まで残っていた強がりが崩れた。

涙がまた溢れる。

止まらない。

止められない。

陽依は小さく首を振った。

「ごめんなさい……」

掠れた声が零れる。

月城は眉を寄せる。

「何で謝る。」

「私が……」

言葉が続かない。

苦しくて。

悔しくて。

情けなくて。

全部が混ざっていた。

すると月城はゆっくり言った。

「月島。」

その声は優しかった。

今まで聞いたどの言葉よりも。

「お前は悪くない。」

その瞬間。

陽依の視界が大きく揺れた。

ずっと欲しかった言葉だった。

誰かに言ってほしかった言葉だった。

自分が悪いんじゃないと。

苦しかったなと。

頑張ったなと。

誰かに言ってほしかった。

ずっと。

ずっと。

一人で抱えてきたから。

陽依は唇を震わせる。

声を出そうとする。

けれど上手く言葉にならない。

代わりに涙だけが次々と零れ落ちた。

月城はそんな陽依を見て、小さく息を吐く。

そして女子たちへ視線を向けた。

その目は先ほどまでとは全く違っていた。

静かだった。

けれど、はっきりと怒っていた。
誰が見ても分かるくらいに。

踊り場の空気が張り詰める。
誰も何も言えない。

ただ一つだけ確かなことがあった。
この瞬間から、もう今までと同じようには終わらないということだった。