僅かな距離

無理に引き止めない。

問い詰めない。

月城らしい対応だった。

だから余計に苦しかった。

陽依は小さく頭を下げる。

そして教室を出た。

背中に視線を感じる。

振り返る勇気はなかった。

振り返ったら、
本当に全部話してしまいそうだったから。

廊下を歩く。
足が重い。

一歩進むたびに後悔が大きくなる。

さっき言えばよかった。

助けてって
苦しいって

でも、もう遅い。
自分で断ってしまった。
自分で逃げてしまった。
陽依は唇を噛んだ。

そして校舎の奥へ向かう。

屋上階段へ。

行きたくない場所へ。

それでも足は止まらなかった。

階段が見えてくる。

胸の鼓動が速くなる。

嫌な予感しかしない。

昨日より。

一昨日より。

ずっと。

今日は何かが起きる気がした。

そして、踊り場へ辿り着いた陽依は息を止める。
そこには女子たちだけではなかった。

女子たちの足元には。

数枚の写真がばら撒かれていた。

全部。

月城と陽依が写っている写真だった。

その光景を見た瞬間。

陽依の全身から血の気が引いた。
女子たちは笑っていた。

まるで、
陽依が傷つく瞬間を待っていたみたいに。