僅かな距離

「……あの。」

声が震える。

月城の表情が少しだけ変わる。

「どうした。」

優しい声だった。

だから。

危なかった。

涙が出そうになる。

助けてください。
苦しいです。
怖いです。

その言葉が喉の奥まで上がってくる。

けれど。
出ない、どうしても出ない。

長い間一人で抱え込んできたものは、そう簡単に口から出てくれなかった。

「すみません。」

陽依は俯いた。

「今、用事があって……」

言った瞬間。

胸が痛くなった。
嘘だった。
助けてほしいのに。

自分から離れようとしている。

月城はしばらく何も言わなかった。
陽依は顔を上げられない。
怒られるだろうか。

不審に思われるだろうか。

そんなことばかり考えていた。

やがて。

「そうか。」

月城は静かに言った。

責める声ではなかった。
むしろ、少しだけ寂しそうな声だった。

「分かった。」

それだけだった。